Digital Wellbeing
社会情報学会
デジタル社会とウェルビーイング研究部会
第1回勉強会が開催されました。
2022年2月14日
「GIGAスクール元年ー国際社会の動向から日本におけるデジタルシチズンシップの醸成と教育の方向性を考える」
勉強会概要
今日、日本社会において、デジタルト・ランスフォーメーションへの取組が加速している。その影響は、成人だけにとどまらず、子どもたちの生活環境も変革している。子どもたちを取り巻くデジタル・メディア環境は劇的に変化しており、日々の生活においてインターネットやデジタル機器の使用は必須となっている。彼らが学ぶ学校においても、GIGAスクール政策が施行され、学校のデジタル環境も変化しており、教員はその対応に迫られているのが現実である。
この様な状況の中、日本の学校における、インターネットの適切利用に関する教育は倫理、道徳、マナーに主眼が置かれた「情報モラル」が行われてきた。しかし、欧米では"Digital Citizenship Education"や"Digital Literacy"といった「デジタル市民」としての視点から人々がとるべき行動に主眼が置かれた教育が講じられている。さらに、国際機関の政策においてもデジタル市民に向けた政策が講じられている。2021年、国際連合は「デジタル環境に関連する子どもの権利に関する一般意見No.25」を、OECDにおいても「デジタル環境における子どもに関する勧告」を発しており、これらの政策文書では、デジタル環境の中で生きる子どもたちの権利、参加、保護に関して言及されている。
この様な国際状況を踏まえて、本勉強会では、デジタルシチズンシップに造詣が深い法政大学の坂本旬先生をお招きして、デジタルシチズンシップに関する諸外国の動向を概観するとともに、国際社会と日本における政策や教育の方向性の違いを浮き彫りにするとともに、今後の日本におけるデジタル市民意識の醸成とその教育の方向性について議論を深めたい。
講師:坂本旬氏(法政大学 教授)
講演概要
本報告は、デジタル・シティズンシップに関する理論や諸外国の動向を概観するとともに、昨年度以降、日本におけるデジタル・シティズンシップ教育に関するさまざまな施策や運動、政策の現状を紹介する。デジタル・シティズンシップ教育は、GIGAスクール構想と関連されて議論されることが多い。デジタル・シティズンシップ教育には否定的・肯定的な見解があるが、そこにはデジタル教育そのものに対する批判も含まれている。しかし、同時にデジタル・シティズンシップ教育実践が広がりつつあることも事実であり、たった一年で教育現場に影響をもたらしたことは特筆すべきことである。これらの動向を踏まえ、今後の日本におけるデジタル市民意識の醸成とその教育の方向性について検討を行いたい。